「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んで



アメリカのグローバリズム、新自由主義政策について、本を読んで学んだ。
グローバリズムが帝国主義と同義だということがよくわかった本だった。
行き過ぎた自由主義がどれだけ恐ろしいことかがわかった。
サブプライムローンのときの恐ろしいまでの弱者からの搾取の方法が書かれていた。
銀行員に多重債務者や貧困層の人々の地図を片手に銀行からの融資をしていたそうだ。
個人情報が出回ることの恐ろしさがわかった。

イラク戦争での貧困ビジネス、医療費の高騰、教育費の高騰、社会保障費の削減による生存権の喪失。
ひとつの病気で、中間層から貧困層に簡単に落ちてしまうアメリカの社会システムの脆弱さ。
授業料の高騰により、学資ローン地獄で、返済不可能になり、借金返済のため、軍に入隊する大学卒業者たち。
落ちこぼれゼロ法という名で、軍に高校生の個人情報が提供されるシステムを使って、それを利用する軍のリクルート手法。
多重債務者に高額な給料で釣り、イラクに派遣する、民間派遣会社。(イラクは劣化ウラン弾による放射能の汚染地帯のため、健康被害が多発している地帯である。俗に言う湾岸戦争症候群である。この本では、単に白血病にかかったという話が書かれていただけだったが。なぜ白血病になったかと、イラクに一般人が行きたがらないかについては書かれていなかった。劣化ウラン弾は、対戦車の砲弾に用いられている。従来まではタングステンを用いた砲弾が用いられていたが、劣化ウランは、ウランの核処理廃棄物であるため、非常に安い値段で仕入れられる。都合のいいことに、比重が高くて硬いため、従来の砲弾よりも優れているため、湾岸戦争以来、用いられるようになった。イラク戦争の戦場だったイラクでは、健康被害が多数報告されている。これについては、別途「もうひとつの核なき世界」という本の紹介で書きたい。)

どれも自己責任という話で済ませられない話ばかりだ。
NAFTA、米韓FTAで、アメリカのグローバル企業は加盟国から搾取をしたかも知れないが、国内の中間層はぼろぼろになった。
アメリカの製造業は、国外に工場を移し、ラストベルト(錆付いた地帯)と呼ばれる地帯ができてしまった。
人、金、モノの移動の自由化なので、当然の帰結である。人件費の安いところで生産して、利ざやを稼ぐ。ビジネスなのだから当然である。
アメリカ国内には、人の移動の自由化で、メキシコから、安い労働者が入ってきて、最低賃金以下で働くため、アメリカ国内の雇用が奪われた。
これは最近のトランプさんの発言で、わかる話だと思う。

メキシコと韓国の惨状を見ると、TPPが本当に怖い制度だったのがよくわかる。
金融、法曹、医療、著作権についての自由化がなければ、それほど怖い話ではなかったかも知れないが、ここは譲ったらいけない部分なのがよくわかる。
民営化によるサービスの低価格化、質の向上ということをうたって、日本でも民営化の波が来ているが、電力、水道の自由化は危険だ。インフラの安全保障が崩壊してしまう。もし、電力、水道が株式会社化されてしまった場合、アメリカでは、確かに電気代は安くなったようだが、停電が頻発するようになった。水道も同じようなことが起こるだろう。どちらの話も民営化などしたら、利益が出なかった場合、企業はその事業から撤退してしまう。そのとき、生活に必須のインフラが消えるわけにいかない。どうやってインフラの安全保障を担保するのか、僕にはわからない。おそらく、政府もそこまで考えていないと思われる。

日本は、他の国の失敗した政策をするのが好きだが、なぜ失敗から学ぼうとしないのか不思議でならない。
日米FTAを結ぼうとしているが、米韓FTAから学ぶことは多いと思うので、ぜひ国益にならない部分に関しては譲らないようにして欲しいものだ。

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