アメリカによる銃乱射事件から考えるアメリカの銃社会、銃乱射事件はなくならないのか?







文化放送のラジオネタです。コメンテーターは評論家で作家の佐藤健志さんです。

アメリカによる銃乱射事件からアメリカの銃社会について考えてみたいと思います。

アメリカ南部フロリダ州のパークランドの高校で日本時間で2月15日に19歳の元生徒が銃を乱射し、17人が死亡する事件が起こりました。

アメリカの銃乱射事件

フロリダ州のパークランドの惨劇は、1949年以後、アメリカで起きた銃乱射事件の中で犠牲者が多いというランキングで、第9位。学校の中で起こった事件では、第3位という、凄惨な事件だったことが伺えます。

それだけではなくて、アメリカのメディアによると今年だけで、学校内の発砲事件がすでに18件。コネチカット州選出の上院議員クリス・マーフィーさんが議会の中で、こんなことは、アメリカ以外では起きない、こんなことが起こるのはアメリカだけだとおっしゃり、大いに嘆いたとのことです。

しかし、アメリカは暴力犯罪で見ると、認知件数、発生率どちらも基本的に1990年代に比べて基本的に減少傾向にあります。

アメリカの治安が悪くなっている一方ではないとのことです。

ところが、銃乱射に関しては、アメリカが世界のメッカです。

銃乱射事件とは、何を以って銃乱射事件とするかというと厳密は定義はないのですが、FBIが使っていた2013年までの定義によると4人以上の死者が同一の現場で出たものだそうです。

1966年から2012年までの間に世界全体で起きた銃乱射事件の約3分の1がアメリカで起こっています。

アメリカで起こっている銃乱射事件が多いのは確かです。

銃乱射事件を未然に防ぐには

未然に防ぐことはできないのだろうか?と思ってしまいますが、未然に防げたケースもあります。

フロリダのパークランドの事件が起きる前日に、ワシントン州で18歳の少年が自分が通っていた高校を襲撃する準備をしていた容疑で逮捕されています。

なぜ逮捕されたかというと、容疑者の少年のおばあさんが、少年の日記を読んだところ、襲撃を暗示する内容が書かれていたことに驚いて、警察に連絡をしたとのことです。少年のギターケースの中には、半自動ライフルが見つかったそうです。事件を未然に防げたわけです。

家庭内で、監視していなければ、学校で乱射事件が起こるということになります。アメリカとはいったいどういう国なのか!?ということです。

日記を盗み見たこと自体は、褒められたことではないですが、事件を事前に防げたことを考えると必要だったということになります。

殺傷能力の高い銃が簡単に手に入るアメリカ

世界の銃乱射事件の3分の1が起こっているアメリカですが、銃が買えてしまうということが大きな原因だと思われます。

市民100人あたりの銃保有数を調べますとアメリカは88.8丁。断然、世界最高です。

世界のアメリカ以外での銃乱射事件では、犯人は1丁しか銃を持っていません。

アメリカの場合、銃乱射事件の犯人は、半数以上で2丁以上を持っています。しかも持っている銃が普通の銃ではないです。

今回のフロリダのパークランドの事件で用いられた銃はAR-15と言います。AR-15はアサルトライフルと言いまして、日本語に訳すと突撃銃という意味になります。AR-15というのは、米軍が使っているM-16とほとんど同じもので、民間向けモデルとなります。基本的に同じものです。ただし、M-16は完全自動式です。AR-15は半自動とのことです。

軍で突撃用に用いる殺傷能力抜群の銃を一般人が持ててしまうということです。。。普通に合法的に買うことができてしまうということです。

つまりは、猟銃を持って事件を起こしたというようなレベルの事件ではないです。

銃乱射事件が起こる原因は?

何度も言われることですが、銃を規制すればいいじゃないかと思いますが、アメリカでは、銃規制の方向には動きません。

トランプ大統領も事件を受けて、演説しましたが、6分間くらい話して、銃規制に関するコメントはまったくなし。過去の銃乱射事件に関しても、殺傷能力が高い銃が蔓延することが問題ではなく、精神状態に問題がある人が多いことが問題なのだとしています。しかも、トランプ大統領一人の見解ではなく、アメリカ人の大半がそう考えているということです。

最近、ワシントンポストとABCテレビが合同で行った世論調査によると「銃乱射事件の原因は何ですか?」という質問に対して、

 ・メンタルに問題のある人がいるからだ:57%
 ・規制が足りないからだ:28%

銃を持つ権利は当然あるべきだと、アメリカ人は考えていることが伺えます。

銃を所持する権利の根源

なぜ、アメリカ人はそれほど銃を持つ権利にこだわるのかですが、NRA(全米ライフル協会)はワシントン有数のロビー団体となっています。(ロビー団体とは、献金や政治家への働きかけで、政治を動かす団体のことです)

よく言われることは、NRAが政治家に献金しまくっているから、銃規制が進まないと言われます。

最近出てきた話では、NRAを通じて、ロシアがトランプ大統領に献金したんじゃないかとロシア疑惑に新たな側面も出てきています。実はもっと根本的な問題があります。

合衆国憲法の憲法修正第2条という条文があり、1791年独立からほどなくして、制定されていますが、内容は「自由な国家の安全保障には、訓練された民兵が必要である。ゆえに、人々が武器を保有し、携帯する権利を侵してはならない。」

つまりは、武装した市民が国の安全を支えるということです。

なぜ安全保障をしっかりしたいならば、常備軍を強化すればいいという話にならないのかということですが、今はアメリカは世界最強の軍事大国ですが、もともとアメリカ人は、常備軍というものに否定的だそうです。

アメリカはもともとイギリスの植民地でした。植民地時代のアメリカにとっては、軍と言えば、イギリス軍でした。そこから独立戦争をやって自由を勝ち取るわけですから、軍隊は敵だったのです。

組織された軍隊は、悪い権力者が軍事力を乱用するかも知れない。だから、民兵こそ正義であるという発想が根深くあるということです。アメリカ人はどこかで政府を信用していないということです。常備軍よりも民兵という発想が強いわけです。

アメリカはなかなか軍事パレードをなぜやらないのかというと、常備軍に対して否定的だからだということです。

常備軍が強いということは、権力者によって、国民が抑圧される準備ができているということになります。つまりは軍事パレードなどやるな!というのが20世紀前半までの発想だったそうです。

つまり、常備軍を信用していないので、民兵による自治を優先したいという考え方が根深く、それこそが民主主義だ!と考えているわけです。

そういうときに、武装する権利を乱用する、銃を乱射することをどう防ぐか?問題はそこにあります。

銃乱射事件が社会問題になり出した原因

地域の共同体の結びつきで、みんな知っている人だから当然そんなことはしない、普通に暮らしていたら少しずつ豊かになっていく、将来に希望が持ているいわゆるアメリカンドリームがあるというようなことが、今まで歯止めになっていたのだと思いますが、近代化が進めば、どうしても地域社会というものは、解体されていきます。

経済的にも、アメリカは没落が進み、しかも格差が拡大し、貧しく生まれた場合は、なかなか前途に希望が持てない。っとなると、銃乱射に対する歯止めがなくなってしまったということです。本当の根本の問題はそこにあるわけです。

何をすれば、銃乱射の対策になるのか?普通に考えたら、規制強化ですが、これだけ銃が出回ってしまっている状態では、逆効果になる可能性があるとのことです。

どんな政策が銃犯罪を減らすより、本当に効果的か、これに関する調査をやろうとしているそうです。20年前から言われているそうですが、NRA(全米ライフル協会)がバックについて横槍を入れてくるので、なかなか進まないそうです。

そろそろアメリカも銃犯罪に対して、真剣に考えないといけない時期ではないかと思います。

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