文化放送のラジオネタです。コメンテーターは藤井聡さん(内閣官房参与(京都大学大学院教授))です。
前に「リニア談合4社調整2011年合意始まっていたようだけど、民間企業の受注の談合に東京地検は関係ないんじゃない???」という記事で、リニア談合の話を書きましたが、以前は、三橋さんの意見でしたが、今回は、専門家である藤井先生のお話です。
リニア談合は本当に悪なのか?
リニア新幹線の建設工事をめぐるゼネコン4社の談合事件で、東京地検特捜部は、先週大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設、リニア担当だった大成建設の元常務と鹿島営業の担当部長の2人を独占禁止法違反の罪で起訴しました。
この談合事件は大手ゼネコン4社がそれぞれ独自に作った技術関係資料を交換していたことがわかっています。検察幹部の立件の意義について「9兆円の国家事業で慣れ合いしていたことが信じられない。こんなことをしていたら、社会が腐り、日本企業の競争力が損なわれてしまう。」と語っています。
藤井先生的には、検察幹部のこの発言は、信じられないそうです。法治国家なので、法律を守るのは当たり前ではありますが、リニア工事は、公共事業であり、プライベート事業でもあるものです。この事業を円滑に進めて、国益を上げようという話で、そのときに、どういう形で、技術者が分担したらいいかという問題が存在しているわけです。この事業は大変な大国家事業であり、難事業ですから、技術的な意見交換をする、それで業者間の間で、調整を図るということは、技術者側からすると、なんで捕まるのか、意味がわからないということです。そういった技術者側の率直な意見も出ているとのことです。
検察の幼稚な考え方
しかし、法律的には、これは間違えなんだと、法の番人としては、これで捕まえるのであれば、仕方がないと思いますが、藤井先生が検察幹部の話が信じられないと言っているところは、「社会が腐る」とまで言っていることだとのことです。
法律違反をおかしたからと言って、社会が腐るわけではない。正しいことをして、あえて法律を犯す人もいるわけですから、今回の件で、「社会が腐る」とまで言っている、この検察幹部自身が腐っているのではないかと思えているそうです。社会正義とはいったい何なのかと、問いただしたくなるわけです。この検察幹部自身が幼稚で子供であるから、こんな発言が出るのだろうと言っておられます。
意見交換が違法とのことですが、国家の大事業であり難事業である、今回のリニア工事では、意見交換は必要なことですし、利益を分け合うために、分担をわけあったというわけでもないと主張しているわけです。準大手のゼネコン関係者は、これが談合と言われるなら、リニアには手を出しづらくなると語っておられます。
JR東海の知識不足?
今回の工事は高度な技術を必要とするもので、一つの会社で全てをまかなうことは無理な工事です。
今回の発端は、JR東海が技術力がないために、発注の仕方もわからなかった可能性が高いわけです。
だから、大手を集めて、どうやったらいいのか、どうやって発注したらいいんですか?と聞いていた節があるそうです。
じゃあ、こうやってやりましょうとゼネコン側で決まったわけです。月2回情報交換やっておきますからと、どちらかというとゼネコン側は善意で話し合って、それならば、こういう風にしましょうかという話にしたのですが、法律違反で捕まっているわけです。
JR東海が、もうちょっとしっかりしていたら、こんなことにはなっていないだろうという話です。国交省が発注していたら、こんなことにはなっていなかっただろうとのことです。
談合をどのように制度的に担保するかは考えるべき
ゼネコン関係者によるとリニアの全区間の84%を占めるトンネル工事は、世界トップレベルの掘削工事の技術が必要とされます。都心部とか山岳地帯に応じた独自の技術開発を進めてきたということです。大手の4社が同じ工事を狙って、同じ技術を研究していたら、リニアなんか成り立たないというような指摘もあるものです。
この事件の背後にあるものは、検察の哲学にある談合はとにかく悪だと思っているところです。
なぜこれほど強く藤井先生が言っているかというと、談合の研究をしているそうです。実際に公共調達で明治時代から政府の公共事業の発注の制度はいろいろ変わってきています。その中で悪い談合もあって、談合でぼろ儲けしたケースがあったり、自民党の議員が出てきて、暴利をむさぼるようなことも確かにありました。
なんとかそういう悪い談合を回避して、競争入札や指名入札などを取り入れて、いろいろ工夫してやってきて今があるわけです。
藤井先生が素敵な制度だと思ったのは、明治時代から公共調達をやってきて、最終的に昭和19年あたりにたどり着いた制度で工業組合法というものがあって、これは、政府が例えばリニアなどの鉄道を作るときに、発注者に受注させるのは、組合に受注させるやり方です。そして組合と契約するわけです。組合は、いろいろな業者がいて、組合の中で、話し合えばいいという制度です。すなわち、談合を制度的に認めているということです。
そうしないと、どこがこの分野で一番得意なのか、業者がわかっているので、その中で決めてもらうと。いわゆるルールを作って、業界の力、アビリティ、能力、組織力
があって、その中で、適正な価格でやるというのが、これが一番の落としどころだということで、日本はそれでやっていたのですけど、戦争に負けて、GHQが来て、自由競争主義を取り入れさせられて、公正取引委員会を作って、独占禁止法を作って、組合は壊されて、一般競争入札だ!というこおとになり、明治初期の状態に戻されたわけです。そこからまた同じ歴史を繰り返して、今に至っているわけです。だから、話し合いという要素は公共事業においては必要なのだそうです。それをどうやって、制度的に担保していくかということが課題であって、談合が悪だと考えているのは幼稚な発想だということだそうです。適正な談合をどうやってやっていくか、不適正な談合をどうやって排除していくか、適正な話し合いをどうやって担保するかを考えていくべきだとのことです。今回の案件で、それを考えさせられる事案だと思うとのことです。
談合に関わった4社を公共事業から排除?
以下のような記事がありました。
談合したからと言って、大手ゼネコンの体力を削るようなことを政府がして本当に国益を損ねないのでしょうか?
日本の発展途上国化を促進する事案となりそうです。
むしろ、ゼネコンの体力を回復させる必要がある、デフレの現状で、こんなことを国交省が行うことは信じられないとしか言えないように思います。
本当に、高層ビルも、橋も作れないようになる将来が見えてきたように思えてなりません。自国の産業を守るのが、政府の役目だと思うのですが、今の政府は日本を貶める方向にしか進まないのが現状ですね。。。
自国の企業を守るという、当たり前の精神も喪失してしまっている日本は本当にあとどのくらい先進国ですと言っていられるのか、先行きが不安な今日この頃です。