文化放送のラジオネタです。コメンテーターは経済評論家の三橋貴明さんです。
フランスのマクロン大統領の支持率が早くも落ちているようです。
不人気のマクロン大統領
安倍首相ではないですが、マクロン大統領の支持率が早くも36%まで落ちているそうです。
もともと、1回目の大統領選では、反グローバリズムを掲げるメランション氏とルペン氏で合わせて、40%を超える票が投じられていました。メランション氏は左派、ルペン氏は右派です。
そして、決選投票では、メランション氏に投じた人は、いくら反グローバリズムとはいえ、右と左でまったく違う立場のルペン氏に投じられなかったため、棄権したものと思われます。
マクロン大統領になった後にやった国民議会選挙(日本でいうところの総選挙)では、投票率44%でした。
もともと、マクロン大統領は国民に支持されていなかったということが言えると思います。
その状況で、緊縮財政路線を宣言、特に問題だったのは、国防費の削減でこれが問題となり、軍の参謀総長(制服組のトップ)が辞任してしまいました。
人気のないところに、緊縮財政路線に舵を切ったことで、さらに支持率が下がったようです。
前の大統領だったオランド前大統領も、支持率が低い大統領だったのですが、3ヵ月後の支持率で比較すると、マクロン大統領の方が支持率は低いそうです。
財政赤字対GDP比を3%の謎
マクロン大統領は、EUの決まりである、財政赤字対GDP比を3%以内に収めることを掲げています。
5900億円の歳出削減を宣言しています。
具体的には、公共事業削減、防衛費削減、住宅補助の削減などを挙げています。
日本と同じようなことをしています。。。
フランス国民はそれに怒っているそうです。
日本も1997年に財政赤字対GDP比を3%以内に収めることを法律で定めましたが、なぜ3%なのか、根拠はないそうです。
デフレの国で、財政出動を増やさないといけないのは当たり前のことです。つまり、財政赤字対GDP比の上限が3%では低すぎます。逆にインフレだったら3%の赤字は大きすぎます。つまり、臨機応変に財政赤字対GDP比は変えないといけないのですが、なぜか3%と固定になっています。
どうなるフランス?どうなる日本?
労働状況ですが、今のフランスは、インフレ率1%を切っています。さらに国債の長期金利も1%を切っています。現在失業率は10%ですが、普通に国債を発行して、雇用を創出したら、間違えなく、雇用は改善できます。
しかし、EUに入っているために、国債が発行できないため財政出動を拡大できません。ユーロを導入しているので、国債の買い取りもできません。
つまり、失業率が高いのですが、政府の財政拡大、金融政策で、雇用の改善ができないのが現状です。
そうすると、
「失業率が高いのはフランスの労働規制が強固であるからだめなんだ。
具体的には、パートタイムの割合は、ドイツが26.7%、イギリスが25.2%、フランスは18.2%。少ない。
正規社員が多い。問題だ。最低賃金はドイツが8.8ユーロ、イギリスが8.6ユーロ、フランスは9.76ユーロ。最低賃金が高い。
フランスは労働者が保護されている。だから規制緩和をしないといけない!」
っというレトリックになってしまうわけです。そうすると、
「最低賃金は下げなければいけない。パートタイムは増やさなければいけない。」
という規制緩和をする方向にフランスは傾いているわけです。
フランスはインフレ率も国債の長期金利も1%を切っているデフレ状態です。普通に政府が国債を発行して雇用を創出すればいいだけですが、EUに入っている限りできない状態にあるわけです。
労働規制の緩和、日本の竹中平蔵が大好きな構造改革をやらざるを得ないのです。具体的には、
「最低賃金を下げるために、会社が正規社員を解雇しにくいので、そんな規制をなくせ。いつでも解雇できるようにしろ。
そうしたら、国際競争力が上がる。(ここでいうところの国際競争力とは価格競争力のことです)
フランス人の社員の給料を落として、処遇を落とせば、価格競争力が戻る。
フランス人が貧乏になれば、価格競争力が復活するから失業率は改善する!」
っというレトリックになっているわけです。
歪んでいます。。。
これは日本でも同じことが起こっています。
日本人の実質賃金が下がっています。労働規制を強化すればいいだけなのです。
介護業界の人たちは全員公務員にしてしまうということもできるわけです。
やればいいのだけれど、「そんなことできない」というわけです。「なんで?」と聞けば、「国の借金で破綻する~!」と言うわけです。
財政問題を無理やりクローズアップさせて緊縮財政を強要させます。(日本の国債は100%円建てなので、円を発行できる日本政府が破綻することはありえない)
「企業の競争力を高めるためには、労働者の賃金の低下や処遇悪化しかない」というのです
労働者の賃金が低下すると利益が増えます。誰が喜ぶかと言えばグローバル投資家です。
グローバル化の弊害
つまり、今のフランス政府はEUおよびユーロに縛られていて、フランス国民の政策ができなくなっています。
グローバル投資家のための、配当金拡大のための政策しかできなくなっています。
イギリスがいち早くEUを抜けましたが、フランスも抜けないとどうにもならないことが浮き彫りになってきています。
人々の暮らしを壊さないと国際(価格)競争力が回復しないというレトリックになってしまっているのです。
日本は、金融政策をやっていますが、財政拡大をやって、日本国民を豊かにする政策ができるのだけどやらないです。
なぜかというと、「財政拡大などをすると国の借金で破綻する~」「じゃあどうするんだよ~?」「だから労働規制の緩和だろ、派遣労働の拡大だろ、法人税の減税だろ!企業の純利益を拡大して、グローバル株主様たちを喜ばせようじゃないか!」
っという、日本国民のためじゃない政策がバリバリ行われているというのが現状です。
日本もフランスも同じです。
フランスがEUを離脱する可能性
フランスはEUとユーロに入っている限りどうにもなりません。
日本はどうにかなるんだけれどやりません。
フランスはEUに今入っていること自体が愚かですが、日本は入っていないのにやらない。どっちが愚かなのでしょうか?
フランスも日本と同じ状況です。しかし、フランスはEUに入っている限りどうにもならないです。
フランスはマクロン大統領がこんなことをやっていたら、また反グローバリズムが勃興して、EU離脱に動くと思われます。
イギリスが抜ける、フランスが抜けるで、EUは瓦解せざるを得ないと思われます。イタリアも抜けることになるでしょう。
EU自体が仕組みを見直せばいいと思いますが、EUの成り立ちや構造を考えると、EU自体が変わることはありえないと思われます。
近い将来、EUが瓦解するのは避けられないものと思われます。あと5年後、どうなっているのか?
フランスが正しい方向に進むとすれば、EU離脱が濃厚になってくると思われます。