今日はちょっと趣きを変えて、最近のニュースです。
2月22日の朝のラジオでエンゲル係数が上昇した話が、TBSラジオと文化放送の両方でやっていて、見解が180度、違っていたので、それをネタにしてみたいと思います。(まだradikoのタイムフリー機能で聞けます。1週間視聴可能。)
エンゲル係数とは支出における食費の占める割合です。
高いほど、貧困度を表わし、発展途上国では特に高くなる傾向があります。
まずはTBSラジオ
まずTBSラジオのスタンバイという番組の渋谷和宏というコメンテーターの話。
ラジオによると2月17日に総務省は、エンゲル係数が29年ぶりの高水準となったと発表しました。
前年比0.8%上昇の25.8%となりました。ここ、4年連続の上昇となります。
2005年の調査では、22%台だったので、10年で3ポイント上昇となります。
他の先進国を見ると2011年の記録ではありますが、アメリカは15.2%、ドイツは19.7%でした。
他の国と比べても大きく差が開いています。
収入が伸び悩む中、食費が上がってしまったのが主な要因と考えられます。
各家庭の支出の平均は、28万2188円(前年比1.7%減)ですが、その中で食費は7万2934円(前年より1090円上昇)となりました。
輸入品の高止まりと野菜の価格上昇が打撃となったことが考えられます。
支出の内訳では、医療費と教育費、食費に支出が向けられていることが伺えます。
あと、傾向として、高齢者になればなるほど、食費が占める割合は高くなっていて、70歳台で、エンゲル係数は28%になっています。
30%台は、日本の1970年代の値ですので、生活水準が昭和の時代に戻ってしまっていることを示しています。
その中で対策として、以下を挙げていました。
・政府の無駄遣いを減らす。
・企業の内部留保を減らす。
・お米などの農政のあり方を見直す。輸入米の関税を高くしている。しかし、今の農政の維持は難しい。
企業の内部留保は、2016年3月時点で、366兆6860億円と発表されています。
まだ賃上げ余力はあるということが言えます。
次は文化放送
次は文化放送ですが、おはよう寺ちゃん活動中という番組の藤井聡さん(内閣官房参与(京都大学大学院教授))がコメンテーターの話。
エンゲル係数は2000年以前はなだらかに下がっていました。
2000年代から横ばいになり、徐々に上昇。
2013年消費増税後から、急に上がり出しました。
30年前のエンゲル係数に戻ってしまいました。
エンゲル係数は貧困化を示すデータで、日本の発展途上国化が進んでしまっているというデータであると示しています。
消費増税が原因でエンゲル係数が上がったので、消費減税の話を進めるべきとのことです。
両番組の比較
TBSラジオは、細かいデータを出していますが、傾向などを示せていない点で、文化放送の方がエンゲル係数の推移がわかりやすいと思います。
また対策についてでは、渋谷氏の対策は的をはずしている感が否めないと思われます。
政府の無駄遣いを減らす。⇒デフレ期に政府支出を抑えれば、デフレがさらに深刻化します。(これをずっと日本は続けてきたので、未だにデフレのままです。政府の支出は民間の収入なのです。)
企業の内部留保を減らす。⇒これはそのとおり。内部留保が多すぎる。
お米などの農政のあり方を見直す。輸入米の関税を高くしている。しかし、今の農政の維持は難しい。⇒農政は食の安全保障のことを考えると、日本はむしろ農業をもっと保護しないといけない。他の先進国と比較すると、日本の農家への補助金は最低です。ヨーロッパなどは、農家の収入に占める補助金の割合は90%台。ほぼ国家公務員なのです。農家は国境付近に多いため、農地放棄などで、国境に人がいなくなると、他国に乗っ取られるので、国境維持のために、援助しているという面もあります。しかし、アメリカでも補助金が出ていることを考えると日本の農家はもっと守るべきだと思います。それほど、食の安全保障は大事なのです。特に穀物の自給率は100%を維持しないと緊急時に対応できません。
渋谷氏の論は、企業の内部留保の話以外、財政均衡主義から出る論だと思いますが、日本の衰退(デフレ)を促進させる方策となっています。
それに対して藤井先生は、消費減税という、デフレ対策で対応するべきだと言っています。
デフレ期には、財政出動は必須であり、それ以外にデフレを脱却することはできないということです。
大体、TBSラジオは、財務省のいうことを鵜呑みにしすぎです。
この間も財務省発表の1053兆円の国の借金」をそのまま報道していました。
日銀による量的緩和をTBSラジオは知らないらしいです。
黒田日銀発足から、日銀は270兆円ほど、銀行保有の国債を買い続けました。
つまり270兆円の通貨を発行してきました。(通貨発行=国債の買取)
日銀は政府の子会社のため、日銀保有の国債は、カウントする必要がありません。
つまり270兆円分、「国の借金」は減っているのです。
ちなみに、財務省のいう「国の借金」とは正確には「政府の負債」です。
もう一つ、財務省が嘘をついているのは、政府は500兆円ほどの資産を持っています。
つまりバランスシートでいうところの借り方に確かに1053兆円が積みあがっているかも知れませんが、貸し方には500兆円+国債買取分270兆円が積みあがります。
そう考えると政府の負債は300兆円ほどなのがわかるのです。
3年前の本では、本当の負債は240兆円と書かれていたので、正確には、200兆円ほどなのだと思います。
日本のGDPは530兆円ほどなので、GDP比で40%ほどです。
どこから日本政府が破綻するという話が出てくるのかわかりません。
財政均衡主義をことさら気にする必要はないのです。
っということを、この話題が出るたびにTBSラジオにメールで指摘し続けているのですが、TBSラジオはへこたれません(笑)
何度メールを出しても返信はないし、報道を改めるつもりもありません。困ったもんです。
ところで、藤井先生の消費減税の話は、もっと内閣官房参与の立場を利用して、政府を動かしてもらいたいものです。
今必要なのは、デフレ脱却なのです。
プライマリーバランス(基礎的財政収支)の再考を政府に訴えたい – 明日は明日の風が吹く
[…] 日本政府の負債は、エンゲル係数の上昇(日本の貧困化)でも示しましたが、政府の資産が大きいことと、日本銀行が国債を全体の40%ほど買い取っているので、現在の政府の負債は200兆円くらいだと思われます。 つまりGDPが大体500兆円くらいなので、GDPと負債の比率は40%ほどです。 大きいと言えば大きいですが、ギリシャのように破綻するほど、大きな数字ではないのです。 しかも、日本国債は、100%日本通貨建てのため、日本通貨を発行できる日本政府が破綻する確率は0%です。 ことさらにプライマリーバランスを気にすることよりも、政府は財政出動をして、早くデフレから脱する政策をするべきです。 そのための助言をするべき経済学者がリフレーションなどというでたらめな理論を持ち出して、せっかくデフレから脱出できるチャンスを台無しにしています。 こんなことでいいのか?と思ってしまうわけです。 […]